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一般報告

NWTによる二重反転プロップファンの非定常流れの数値シミュレーション

Karl Engel, Frank Eulitz
Institute of Propulsion Technology
DLR, German Aerospace Research Establishment
51147 Cologne Germany

and

Kazuomi Yamamoto
Aeroengine Division
NAL, National Aerospace Laboratory

(所属はいずれも1996年当時のもの)



 本研究は、1996年当時、DLR, Institute of Propulsion Technologyに所属していたEngel氏が、DLRと航空宇宙技術研究所原動機部との共同研究の一環として、航空宇宙技術研究所に6ヶ月間滞在した際に行われたものである。
 DLR, Institute of Propulsion Technologyでは、ターボ機械内部の非定常流解析のために、TRACE (Turbomachinery Research Aerodynamics Computational Environment) という並列数値シミュレーションプログラムを開発してきた。本研究では、TRACEをNWTに導入して、TRACEの計算性能評価を行うとともに、はじめて二重反転プロップファンCRISPの3次元非定常流計算を実施した。
 TRACEは特にターボ機械流れを対象にした、レイノルズ平均圧縮性ナビエ・ストークス方程式を並列計算機で計算するためのプログラムである。対流項はRoeスキームにMUSCLによる高次精度化を行い、粘性項は中心差分を用いている。時間積分は、定常流計算用にガウス・ザイデル法による陰解法を、非定常流解析ではルンゲクッタ陽解法による高次精度計算法を導入している。流入・流出境界には無反射境界条件を用い、擾乱波動が境界で反射しないようにしている。相対的に回転するターボ機械内部の翼周囲の格子を接続するために、Sheared Cell法を用いて内挿計算誤差が生じないようにしている。また、乱流モデルは、Spalart-Allmarasの1方程式モデルを修正して2層モデルとして定式化をしたものを利用している。並列計算には領域分割法を用い、PVMあるいはMPIを用いたメッセージパッシングライブラリを利用することで、ポータビティを実現している。
 TRACEをNWTに導入する際にはいくつかの課題があった。もともとTRACEはANSI-Cによりスカラー計算機向きのコーディングを行っており、これを富士通ベクトル計算機用のC言語VPP C/VPを用いてベクトル化する必要があった。またNWT上での並列計算のためには専用のPVMライブラリVPP PVMを利用したが、当時のこのライブラリはまだ初歩的なレベルでNWTのクロスバネットワークにチューニングされたものではなく、関数も基礎的なものに限られていた。本研究ではこのような課題を乗り越えて、NWTではじめてのVPP C/VP と VPP PVMを用いたメッセージパッシングコードとしてTRACEを実行することに成功した。
 今回の計算で対象にした二重反転プロップファンCRISPは、上流側のファンが10枚の翼を、下流側のファンが12枚の翼を持っている。定常解析の場合は、周期境界条件を用いて前後それぞれ1翼のまわりの流れを計算すれば良いので、領域分割数すなわちPE数を増やすことによる計算のスピードアップが課題となる。一方、非定常計算の場合は、前後それぞれ5翼、6翼の合計11翼まわりの流れを計算するために大規模化するため、スケーラビリティが課題になる。NWT上で、それぞれの並列計算性能を調べたところ、スピードアップに関しては、ベクトル化の問題により9PEにもなると理想値に対して60%程度の性能まで落ちてしまうものの、スケーラビリティに関しては、64PEを用いて1300万点まで規模を拡大して理想値の80%弱の性能が得られることがわかった。


参考文献

Engel, K., Eulitz, F. and Yamamoto, K.
"Numerical Simulation of the Unsteady Flow Through a Counterrotating Propfan on the Numerical Wind Tunnel," Proceedings of Mannheim SUPERCOMPUTER '97, June 1997.
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