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一般報告

多段軸流圧縮機の計算と検証試験

新潟鉄工所

  航空宇宙技術研究所と新潟鉄工所との共同研究は「数値シミュレーション技術によるガスタービン要素の空力設計技術の研究」というテーマで平成7年度に開始され、平成12年度末に終了した。
 従来、軸流圧縮機は流線曲率法を用いた設計手法をベースに、試作試験を含めた多大な労力、期間及び費用を投じて開発されていた。さらに近年においては、高負荷・高効率化のため動翼先端部では平均速度でも超音速になりつつあり、前述のような従来手法で対応することはますます難しくなっていた。一方、計算機能力と数値解析技術の向上はめざましく、試験に代わり得る十分なシミュレーション技術として確立されつつあった。実際に物を製作する前に翼列の空力性能や内部流れの挙動をコンピュータ上でシミュレートし、その結果を設計にフィードバックする、というサイクルを設計ルーチンの中で利用していく事を目指し、本共同研究を実施した。
 まず平成10年度までの期間においては、遷音速圧縮機を対象に航空宇宙技術研究所で開発した翼間流れ解析コードCAS3DMを多段解析コードに拡張し、入口案内翼、第一段翼、静翼の3翼列同時の段解析とその検証実験を行った。また、動翼列については改良設計を実施し、原型の翼型と改良した翼型の両方について流れ解析と検証実験を行った。これらにより、本解析コードの妥当性を確認することができ、翼列の設計及び性能評価に有効なツールとなりうることを示すことができた。
 11年度からは実際の軸流圧縮機を対象に、入口案内翼、4段動翼列、出口案内翼の10翼列計算と検証試験との比較を行った。本件については次ページで詳しく述べる。
 以上の共同研究を実施したことにより、本計算コードの妥当性を確認することができ、翼列の設計及び性能評価に有効なツールとなりうることを示すことができた。

1.試験装置および方法


本研究の軸流圧縮機は入口案内翼(IGV)、4段動静翼、出口案内翼(OGV)から構成されており、子午面形状を図1に示す。
 また、流れの状態量を求めるために、圧縮機各動翼出口および OGV出口で全圧・全温の半径方向トラバース計測を実施した。なお、計測機器は 5孔ピトー管と全温型熱電対を使用している。




2.計算条件

(1) 計算領域
 計算領域は、IGVから第2段静翼までの 5翼列に INLET ダクトを加えた前5翼列(図 2)と、第3段動翼から OGVまでの 5翼列に OUTLET ダクトを加えた後5翼列(図 3)に 2分割し、それぞれ別々に計算を行った。なお、前5翼列計算に関しては、第2段静翼の後縁から出口境界までの距離をとるため、仮想的に円筒ダクトを追加した。




(2)計算格子
 計算格子を図 4、5に、格子点数を表1に示す。前5翼列は INLET ダクト、5翼列、仮想ダクトにそれぞれ1PEを割り当てた5翼列7領域計算、後 5翼列は 5翼列と OUTLET ダクトにそれぞれ 1PEを割り当て 5翼列6領域計算とした。全領域とも翼列の周期性を利用して、翼負圧面から隣接する翼の正圧面までの翼列 1ピッチ分を流れ場空間に定義している。






3.計算結果

(1)全体性能マップ
 図 6に全体性能マップを示す。なお、計算結果の効率と圧力比は、前5翼列計算の入口境界面と後5翼列計算の出口境界面から擬似的に算出した。また、計算結果流量は全領域の平均値である。

(2)半径方向分布
 各段動翼出口、および OGV出口状態量の半径方向分布比較を行う。ただし、図 6に示したように、計算結果と試験結果では流量が大きく異なっていることから、比較の妥当性に関しては不十分であった。
 試験との詳細な比較は省略するが、10翼列の軸流圧縮機を前5翼列、後5翼列に分割して計算している都合上、後5翼列計算の境界条件(設計値)を3段動翼入口へ与えている。そのため、2段動翼出口で計算結果と試験結果に大きな差がありながら、3段動翼出口で比較的良く合うという結果を示した。





4.まとめ

 多段軸流圧縮機(IGV+4段+OGV)を前5翼列、後5翼列に分割して計算し、検証試験結果との比較を行った。しかしながら、2つの領域間の流量の差が大きく、試験結果との十分な検証を行うまでには至らなかった。
 今後は各領域の境界条件を改良するとともに、多段圧縮機の全段同時解析が必要である。


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